【フリーゲーム感想】星と雨とが交わる飲み屋
・タイトル:星と雨とが交わる飲み屋
・作者:MIS.W 様
・ジャンル:居酒屋セカイ系ノベルゲーム
・プレイ時間:2時間~
・お勧め度:★★★☆☆ 3
居酒屋で行われる会話と崩壊
(Vector様の説明分引用)
とある文芸サークルの、とある飲み会。
なんてことない居酒屋の会話を発端に、
彼らは本性を現し、そして世界は崩壊を始める。
崩壊の契機は何なのか。
崩壊の原因は何なのか。
この世界に根ざしている闇の正体とは。
プレイヤーは各キャラクターの視点で崩壊を目撃し、
何度も世界崩壊を繰り返しつつ真相を探る。
彼らは、その輪廻から脱出することができるのか。
様々な視点から真相を推理する、居酒屋セカイ系ミステリノベル。
2011年に公開された本ゲーム。「居酒屋セカイ系ミステリノベル」とは何ぞやと興味を惹かれるが、システム自体は一般的なノベルゲームそのもの。途中での選択肢もなく、プレイヤは基本的にはただ文書を読み進めていくだけの形になる。
物語の舞台はガード下の居酒屋。プロローグで見せられる居酒屋内での5人の男女の不穏な振る舞いと世界を襲う崩壊。彼(彼女)らは何を使用としているのか。世界を襲うこの崩壊は何か。崩壊を観測している人物は誰なのか。様々な疑問をプレイヤに抱かせながら、物語は本編へと向かう。
本編はある大学の文芸サークル仲間である5人の男女の会話が中心に描かれる。初めは登場人物の1人である「雨宮」から始まり、飲み会の開始から崩壊までのシーンが、各人物の主観で語られる事になる。
飲み会開始当初は文芸サークルらしく創作活動の話題を中心に会話は進むが、次第に登場人物の抑えられない思いが露になり、場を動かし、想定外の結果を生みつつ、世界は崩壊へと向かう。
1周目では何が起きているのかも分からず、目の前の非現実的な出来事にプレイヤ自身もただただ惑わされるだけだろう。2周目以降、語り手(主観)が変わるごとに情報量も増えていき、朧気ながらこの世界の仕組みが見えてくるはずだ。5人目の語り手に到達する頃には、この世界の成り立ちもある程度推測ができている事だろう。但しその推測が正しいのかはこの物語の結末を見るまで分からない。
本筋のストーリィもさることながら、サークルメンバの雑談も面白い。「欲望の3角形」「哲学的ゾンビ」といった専門用語が出てくる蘊蓄語りもそうだが、主観者が切り替わる事で各人物が話している時の内面描写と第三者の感想が分かり、それぞれの思いのすれ違い感が非常に面白い。ともすれば同じ会話内容の繰り返しになり、だれてしまう懸念もあるシーンだが、上手くプレイヤの興味を継続させる作りになっている。
悲しい真実そして希望・・・
全員の語りが終わるとこの世界の真実が明かされる事になる。ある程度予想できていた事に加えて、衝撃的な事実も語られる事になるだろう。詳細は伏せるが、悲しい真実が突き付けられる中でも、ある種の希望を感じさせてくれる結末となっており読後感は心地よい。
「居酒屋セカイ系ノベルゲーム」とはそういうことなのかと改めて納得。
総評
読みやすい文章と自然にプレイヤに推理を促す情報開示や伏線の妙。衝撃的な内容のプロローグでプレイヤの興味を引き、一度ゲームを開始したら結末まで一気にプレイをしたくなるだろう。
2時間程度とプレイ時間もお手頃のため、「セカイ系」といったワードに抵抗がないならば是非とも一度遊んでみて欲しい。