【フリーゲーム感想】麻生洋一の事件簿 ~どちらかが彼女を殺した~
・タイトル:麻生洋一の事件簿 ~どちらかが彼女を殺した~
・プレイ時間:30分~
・お勧め度:★★☆☆☆ 2
第11回ふりーむ!ゲームコンテストの「推理ゲーム」部門で銅賞を獲得した本作。
名前から分かるように東野圭吾氏の推理小説「どちらか彼女を殺した」のオマージュ作品となっている。
短編ではあるがプレイヤが推理して犯人を指名する必要がある貴重な形式のゲーム。
今回は数少ない「本格」ともいえるこのミステリADVゲームのレビューをしてみよう。
冗長部分を排したシンプルな推理ゲーム
無駄なストーリィは一切なし
ゲームは殺人事件が起きた現場に主人公である「麻生洋一」が到着した場面から始まる。プロローグもなく簡単な状況説明の後、すぐに捜査が開始される。
登場人物のバックグラウンドも特には語られないため各キャラへの感情移入も難しく、全体的にあっさりとした作り。このゲームに重厚なストーリィを求めていると肩透かしにあうだろう。
必要最低限の捜査と提示される情報
捜査自体も非常にシンプル。基本は各現場で登場人物と会話をすることで推理に必要な情報を収集していくだけになる。
主人公も行動自体は自由に選択できるが、一つの現場で捜査が終了したら初めて次の現場に移動できる、といった形でフラグ管理されているため、言うなれば脚本で定められた順番通りに現場を回っていくだけ。考えて捜査をする必要は全くない。
今までの捜査で得られた情報は「捜査手帳」に記録され、必要な情報はこれだけですよとプレイヤに提示してくれる親切設計。情報量も多くはないため情報整理に苦労することはないだろう。
プレイヤが推理を構築し犯人を指摘する
必要な捜査がすべて終わった段階で自動的に犯人指摘モードに移る。
タイトルが示す通り容疑者は2人で、そのどちらが犯人かを当てる事になるのだが、登場人物が推理をしてくれる訳ではないので、プレイヤ自身が得られた事実から推理を構築していかなくてはならない。
とはいえ、何を考えるべきかといった論点が明確になっているため、「捜査手帳」に書かれている情報を素直に読み取れば、正答に辿り着くまでにそこまで時間はかからないはずだ。推理自体の難易度は易しめといってよいだろう。
ネタバレになるので詳細は伏せるが、鍵になるのは「場所」と「凶器」。現場の状況を考えると…だよね、ということで犯人可能な人物を特定できる。指摘後もあれこれ言い逃れをしてくる真犯人に対し「証拠品」を突き付けて論破するのは「逆転裁判」を彷彿とさせて面白かった。
ちなみに2人の容疑者以外の登場人物にも「犯人はあなたです」と指摘できるため、それぞれの反応をみるのも面白い。
総評
無駄な部分を削ぎ落したシンプルな推理ADV。プレイヤは推理に集中できる反面、ゲーム終了後に心に残るものも少ないか。ボリュームも少ないため、どうしても物足りなさは残ってしまうが、とにかく頭を使って推理をさせろ、とお望みの方々には遊んでみてもらう価値はある作品だ。